大田  堯 (教育研究者)
 一つ一つの生命につながる教育が、今こそ求められています。教科書もみな同じように理解するというのではなく、子ども一人ひとりがそれぞれ刺激を受け、一つでも感じるところがあればよしとする柔らかいとらえ方が必要です。教科書は完全なものだと考えると、教化のための書物になってしまいます。
 値うちのある、必要な情報が用意されていて、子どもたちが「なぜか?」の問いを持てることが大切です。次々に問いが生まれて、本物にふれたいと思うというのが望ましい姿です。分かっていることはほんの少しだと知ると、そこから想像力が広がります。
 このような教材を、子どもに近いところにいる教師が整えるというのは至極当然のことです。この営みがかすかな光につながってくれることと思います。(談)
古田 元夫 (ベトナム史研究者・東京大学)
 学校における歴史教育を、歴史的思考力の育成を重視する方向に転換することは、日本だけでなく、全世界的にその必要性が強調されるようになっています。こうした方向での教科書づくりには、中学校や高校などのそれぞれの段階で実際の教育を担い、生徒の力をよく理解している現場の先生方の果たす役割が、決定的に重要だと考えます。このような意味で私は、学ぶ会の「教室から生まれる中学歴史教科書」作成の試みに、日本の歴史教育の新しい道を切り開くものとして、大きな期待を寄せています。
高橋  忍 (市民・埼玉県在住)
 かつて私が経験した歴史の授業は、テストに出そうな事柄をひたすら憶えることであった。しかし、この教科書で展開される授業は違ってくるだろう。ページをめくるごとに、「生」が重なり合い、現代へ徐々に向かってくる。今、私たちが、こうして暮らしている理由が解き明かされ、自分自身が、歴史を築いている一人だと発見させられる。
 生徒自らが主体者となった授業では、問いは教師から発せられるだけではないだろう。教室では、問いは生徒からも発せられ、相互作用を生み、予想もしていなかった深い学びを構築してくれるだろう。クラスが100あれば、100通りの授業が生まれ出す。そういう予感がする。